葬儀の基礎知識
室蘭の葬儀における香典のマナーについて
目次
香典とは?
社会的な通念として一般葬であっても家族葬であっても、通夜や葬儀に参列する際には弔意の証として香典を持参します。室蘭市においても同様に、親族、一般会葬者を問わず参列にあたっては香典を持参するのが通例です。
昔は通夜や葬儀で大量に線香が必要になるといった観点から、葬儀に参列するにあたっては線香を持参していました。いつしか線香の代わりに現金を包むようになり「香典」という名が残されています。線香は仏教で用いるものですから、香典は仏教における葬儀(仏式の葬儀)に基づいた名称です。
一般常識として香典を持っていくと知っていても、香典袋に何をどのように書けばよいのか、幾ら包むべきなのか、すぐに思いつかないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでは、室蘭市の葬儀における香典袋のマナーについてご案内いたします。
①仏式の葬儀での香典袋の書き方について
室蘭で多くを占める仏式の葬儀における香典袋の書き方についてご説明します。
ごく端的に申し上げますと、通夜・葬儀に参列される時には「御霊前」か「御香典」、還骨法要(繰り上げ法要)以降は四十九日法要を含めて「御仏前」と覚えておけば問題ありません。
なぜこのように単純化できるのでしょうか。参列する人の立場としてはその葬儀がどの宗派によって営まれるか判然としません。新聞のおくやみ記事に記載されている情報では宗派についてはっきり分からず、斎場に行くまで確認できないからです。一般的な香典袋の書き方であれば失礼はないという考え方になります。
喪家の親族であるなどして、より詳しく葬儀の情報に接することが出来ている場合はどうでしょうか。この場合あらかじめ檀家寺の宗派がわかるのであれば、宗派ごとの作法をふまえた香典袋の書き方をすべきです。
香典に対する宗派ごとの基本的な考え方は以下のとおりです。
禅宗など、亡くなった方が四十九日までの間「霊」(霊魂)として在るという考え方の宗派では通夜も葬儀も「御霊前」と書きます。四十九日以降は成仏なさったとして「御仏前」に変えます。仏様の前にお供えする香典という意味です。
いっぽう浄土真宗では、亡くなった後に一旦「霊」となるのではなく、すぐに成仏し阿弥陀様のもとで「仏」になるという考え方を持ちます。通夜も葬儀も四十九日以降も、香典袋は一貫して「御仏前」です。
宗派が不明な場合は「御香典」と書けば宗派に関係なく使えます。お香や線香を供えるかわりにお金をお供えいたしますよ、という意味です。「御香奠」や「御香料」と書くこともあります。それぞれに、お供えをする金品という意味合いです。
水引という帯ひもを結び、両端を上部に伸ばした装飾(結び切りやあわじ結び)のある封筒を用意します。帯ひもの色は白黒です。香典袋は不祝儀袋とも呼ばれ、文房具店などで市販されています。封筒に印刷されたものが一般的です。親族や親交の深かった方などである程度のまとまった金額を収める場合は実物の帯ひもで形作られた装飾付きの封筒を使用します。封筒に蓮の花が印刷されているものを使用しても問題ありません。十字架や百合の花がある場合はキリスト教向けの封筒なので使いません。熨斗(のし)が封筒の右上にあるものは祝儀用ですので決して使わないようにしましょう。
封筒の上部に「御霊前」などの表書きを記し、帯の下側に名前を書きます。名前はフルネームで、表書きよりも少し小さめに書きます。薄墨の筆を使うのがマナーです。諸説ございますが涙で墨が薄まるからということと、知らせを聞いて悲しみの中で取り急ぎ用意したので、墨をする時間が十分取れなかったために薄墨になったという説もございます。
仏教以外の宗教の場合に「御香典」という表書きはふさわしくありませんので注意しましょう。
香典袋を汚さぬよう「袱紗(ふくさ)」で包む文化があります。必須ではありません。暖色のものは祝儀の際に使われるので避け、寒色やグレーなどを選びます。紫は慶弔両方で使えるので便利です。
斎場では香典の受付窓口を設けることが多く、香典袋を渡す時には「この度はお悔やみを申し上げます」や「この度はご愁傷さまです」の言葉を添えます。受付に遺族はほとんどおらずお手伝いの方々ばかりとは言え、弔意を伝える場のひとつであることに変わりはありません。受付後、親族に会った時にも同様に弔意を伝えます。
②神道の葬儀での香典袋の書き方について
仏教ではない宗教について、香典袋の書き方はどのようになるでしょうか。神道について以下に記します。
神道は古代日本に起源をもつ宗教です。地縁や血縁で結ばれる共同体を護るために、八百万(やおよろず)の神が信仰されてきました。自然を敬い、祖先の霊を敬うというものです。神社を拠点とする、神社神道とも言われます。葬儀についての考え方は仏教と神道では異なります。仏教の「西方浄土へ故人の魂を送る」考えにもとづく葬儀とは異なり、神道では「故人の魂を、家を護る守護神にする」ことが葬儀の目的です。目的が違うのですから葬儀の内容は仏式と神式で異なります。仏式葬儀での焼香やお線香を手向ける、といったことは行われないので「香典」の語は使用しません。神職や参列者が祭壇に「玉串」を捧げます。榊(さかき)の枝に紙垂(しで)という飾りを付けたものです。玉串を用意する神事への謝礼として奉納するのが「御玉串料」となり、参列者が斎場に持参するお金を入れる袋にも「御玉串料」と記すようになりました。
神式葬儀に参列する場合は香典袋に「御玉串料」や「御神饌料」、「御神前」のように書きます。「亡くなると家を護る御霊(みたま)となる」という考えですから、表書きに迷う場合は「御霊前」で差し支えありません。
水引という帯ひもを結び、両端を上部に伸ばして装飾(結び切りやあわじ結び)した封筒を用意するのは仏式と同様ながら、水引の色に注意します。双白または双銀のものを用意します。神式であるかどうか不明な場合には白黒の水引でも差し支えありません。封筒の上部に「御玉串料」などの表書きを記し、帯の下側に名前を書きます。名前はフルネームで、表書きよりも少し小さめに書きます。仏式同様に薄墨の筆を使うのがマナーです。
③キリスト教の葬儀での香典袋の書き方について
キリスト教は線香を使わないので「香典」の語は使用しません。「御ミサ料」(カトリック)、「御花料」や「献花料」(カトリック・プロテスタントともに使用可)と書きます。ミサとは礼拝の意味で、カトリックのみで用いられる言葉です。
袋については水引の付いた封筒は使わず、白無地の封筒を使います。十字架や百合の花がデザインされている封筒も使用可能。百合の花は聖母マリアを象徴する花といわれるものです。プロテスタントには聖母マリア信仰がないながらも、百合の花が封筒にあること自体には問題ありません。蓮の花がデザインされている封筒は仏式向けなので使いません。
封筒の上部に「御花料」などの表書きを記し、帯の下側に名前をフルネームで、表書きよりも少し小さめに書きます。日本国内の葬儀の場合は、香典袋の表書きは薄墨という社会通念があるため薄墨で記すのが妥当でしょう。
カトリックでは「御霊前」と書いても差し支えありません。プロテスタントでは祈りを捧げるにあたり形のある対象物はないという考え方があるため、「御霊前」とは書かないようにします。
香典として適正な金額とは
香典袋に包む金額は幾らがよいのでしょうか? 地域差もあり一義的に決まるものではないながらも、室蘭では以下のような金額が目安となるようです。一般葬と家族葬で違いはありません。
職場の同僚や友人 3,000~5,000円
職場の上役 10,000円~
親族(祖父母やおじ、おばなど) 10,000円~
兄弟姉妹 30,000円~
親 50,000~100,000円
目安となる金額を記しましたが、厳密な決まりはなく付き合いの深さなどで変わってきますから、一概にルール化できないものです。職場など同じような立場のかたが複数いて香典の金額を検討する場合は、周りの方にも相談して突出したり少なすぎたりしないようにするとよいでしょう。
香典袋と包み方について
香典袋は金額によって、異なるつくりの袋を使います。室蘭では、1万円程度くらいまでは水引を印刷した封筒に入れる人が多いようです。3万~5万円あたりを境に、水引に実物の帯ひもが使われる袋を使います。
中袋にお金を入れ、上包みと呼ばれる外側の袋で包み、裏を折り返す時には下側の折り上げ部分を下に、上側の折り下げ部分を上にします。開口部が下向きになるイメージです。「悲しみを洗い流す」意味があるとも言われています。
上包みに名前や金額、名前など書くのは当然ながら、中袋にも書いておくべきです。万が一、上包みと中袋が別々になってしまった場合に、どなたからいただいたお香典か分からなくなる可能性があるからです。
新札は避けます。「予期して用意していた」わけではないからです。新札を使う場合には一度折り目を付けておきます。使用済みのお札がふさわしいとは言え、ボロボロになっているお札は避けます。
お札を入れる向きに明確なルールはないながらも、封筒を裏にしてお札を出した時に人物の肖像が描かれている表の面が見えるようにして、肖像を下側に入れるのがよいようです。少なくとも、札の向きは揃えましょう。
封筒の裏面に金額を薄墨で縦書きするのがマナーとされています。間違いを防止するために、大字(おおじ)という「壱」「弐」「参」といった漢字を使用。「金壱萬圓」(1万円のこと)などのようにします。封筒に横書きできるようにあらかじめ印刷されているものもあり、算用数字で横書きされている例も散見されますが、なるべく大字で記入するのがよいでしょう。
お札の枚数は「4」(「死」に通ずる)枚や「9」(「苦」に通ずる)枚を避けるようにします。
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