葬儀の基礎知識

「喪に服す」とはどういう意味なのか?

「喪に服す」はよく聞く言葉ではありますが、意味があいまいで、はっきりとした詳細について知らないという方の方が多いのではないでしょうか。本来の意味とは違った使い方をしては恥ずかしい思いをしないためにも、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

今回の記事では、「喪に服す」という意味やその期間、過ごし方、喪に服する間にやっていいことと悪いことについてご紹介します。

「喪に服す」の意味

「喪に服す」の意味は、故人を悼んで一定の期間、行動などを慎むことをいいます。「喪に服する」という言い方もしますが、その場合は「ぶく(する)」と読むことがあります。また、喪に服すことを別の言葉で「服喪(ふくも)」と呼ぶことがありますが、どちらも意味は同じです。

「服喪中」・「喪中」・「忌中」の違い

「服喪中」のほかによく耳にする「喪中」には、どのような違いがあるのでしょうか。

実は、服喪中と喪中は同じ意味を持ち、近しい人が亡くなったときに一定の期間、喪に服することを指します。また、喪中は服喪中を省略したものであるともいわれていますが、実際には喪中よりも服喪中の方が喪に服するという意味合いが強いとされています。

また、喪中に似た言葉で「忌中(きちゅう)」もありますが、こちらは少し意味合いが違っており、忌中は喪中の中に含まれる期間のことを指します。

「忌」という漢字には、「人の死後、しばらくの間家で慎む期間」という意味があります。忌中は、仏式では命日から四十九日法要まで、神式では五十日祭までの期間となっています。

喪に服す期間は?

喪中の期間は、現在は法律で正確に定められていませんが、実は江戸時代には服喪期間を定めた「服忌令(ぶっきりょう)」という法律があり、それが明治時代になると「太政官布告服忌令」という法令へ変わり、昭和22年に廃止されました。

しかし、現代においても太政官布告武家制服忌令の名残はあり、喪に服す期間の目安の一つとなっています。ここでは現代の喪に服す期間についてご紹介します。

喪に服す期間は故人との関係性で決まる

喪に服す期間は、一般的には1年間と認識している方が多いようです。服喪明け(喪中明け)の目安は、故人が亡くなってから満1年目の命日に行われる一周忌法要の後ですが、それは故人との関係性によって違ってきます。

・父母・養父母・義父母:12ヶ月~13ヶ月

・配偶者:12ヶ月~13ヶ月

・子ども:3ヶ月~12ヶ月

・兄弟・姉妹:3ヶ月~6ヶ月

・祖父母:3ヶ月~6ヶ月

上記の期間はあくまで目安であるため、親等上は離れていたとしても生前に大変お世話になった方なのであれば、喪中をわざわざ切り上げる必要はありません。大切なのは、自分が満足するまで故人を想い偲ぶことです。

宗教による違い

宗派や宗教によって死生観には違いがあるため、喪に対する考え方もそれぞれでまったく異なります。

仏教における「死」は、生きる苦しみから解放されて次の人生へ生まれ変わるため(輪廻転生)の通過点だと考えられています。そのため、残された人々は故人が無事に生まれ変われるようにと願い、喪に服します。

しかし、同じ仏教のなかでも浄土真宗では、亡くなるとすぐに仏さまになると考えられているため、喪に服す期間はありません。

また、キリスト教においては、死ぬことで神さまのもとに戻ると考えられているため、喪に服しません。死は悲しいことではあるけれども、喜ばしいことでもあるという教えなのです。

喪に服しているときにやらなければいけないこと

では、実際に喪に服す期間は、具体的には何をするべきなのでしょうか。喪中を過ごすなかでやらなければいけないことは以下の5つです。

1)故人を偲ぶ

喪に服す本来の目的は、故人を偲ぶことです。失った悲しみや寂しさはすぐには消えませんが、悲しんだり落ち込んだりしてばかりいると故人も浮かばれないはずです。悲しむだけではなく、故人との楽しかった思い出を懐かしみながら静かに過ごしましょう。

また、線香をあげるなど日々の供養やお祈りも行いましょう。

2)遺産の整理や手続き

遺産の整理や各種手続きも、喪に服している間に済ませます。

基本的に遺品の整理は服喪明けに行うものですが、もしも故人が賃貸住宅に住んでいた場合は、後にすればするほど不必要な家賃がかかってしまうため、その場合は早めに手続きを始めても問題ありません。

そのほかにも、手続きには期限が定められているものが多くあります。たとえば、年金受給停止は14日以内、雇用保険受給資格者証の返還は1か月以内に手続きをしなければいけません。電気・ガス・水道・電話・インターネットなどの解約も早めに行いましょう。

3)香典返しの準備

香典返しは四十九日法要の後に行うのが一般的であるため、喪に服している間に香典返しの準備をしなければいけません。

香典返しはいただいた香典の半額でお返しする「半返し」で準備するものですが、半額ではなく1/3の金額でお返しする地域や、「香典は不要」という取り決めを行う地域などもあるため、自身の地域はどうなのかを確認しましょう。

なお、最近では四十九日法要の後ではなく、その法要の当日にお返しをする方も増えており、当日にお返しする場合は、一律2,000円台~3,000円台のものをお返しするのが一般的です。とはいえ、大きな額の香典をいただいた相手には失礼になるため、やはり準備しておく必要があります。

4)法要の準備

仏教の場合は四十九日法要や一周忌の手配、神道の場合は五十日祭や一年祭の手配が必要です。会場や僧侶・神主の手配以外にも、参列者、関係者への連絡を行います。法要の後に会食を行う場合は、参列者の人数を把握したうえでお店を予約します。いずれにしても、直前にバタバタと動き出すことのないよう、早めに準備しておけるとよいでしょう。

5)喪中はがき

喪中はがきは、11月上旬から12月半ばまでに届くように準備しましょう。しかし近年は、仕事上のつながりがある方には通常通りの年賀状を出すことも増えています。

もし、故人が年賀状を出していた相手先がわかるのであれば、代表者名義で死亡通知を送ることも可能です。死亡通知の送付は年末である必要はなく、葬儀前に連絡をするのか、葬儀後の報告にするのかは故人とその方の関係性によります。

もしも喪中はがきを出していない方から故人宛に年賀状が届いた場合は、1月7日以降に寒中見舞いを送りましょう。

喪に服しているときにやってはいけないこと

「喪に服す(服喪)」の期間というのは、故人の死を受け入れ、大事な人をなくした悲しみを乗り越えて少しずつ普段の生活に戻るための期間です。そのため、お酒などの嗜好品を避け、外出もなるべく控えて家の中で謹慎し、派手な生活や慶事には参加しません。

ここでは、喪に服している間に特にやってはいけないことを3つご紹介します。

神社への初詣や参拝・年賀状

神道では「死」は穢れ(けがれ)であるため、神社への初詣は避けなければいけません。ただし、四十九日が明けて(忌明け)いればよいとする考えもあります。

そのほかにも、正月に関わることについては注意が必要です。年賀状は送らず、代わりに喪中はがきや寒中見舞いを送り、家では正月の飾りつけはしません。

おせちは、豪華な鯛や海老、かまぼこやなますなどのおめでたい紅白の料理は避け、重箱ではなく普通の皿に盛り付けます。重箱には「喜びや幸福が重なるように」という意味あいがあるからです。

また、お年玉は控えるべきですが、どうしても渡したい場合は「書籍代」や「お小遣い」などの名目であれば問題ありません。

結婚式

本来は、服喪中の結婚式はNGです。結婚式を行うのも出席するのも避けた方がよいですが、近年では四十九日が明けた後であれば問題なく行うケースも増えています。結婚式については、地域の特性やそれぞれ家の考え方などがあるため、親戚などに一度確認するとよいでしょう。

旅行

喪に服している間の旅行は基本的には避けなければいけませんが、旅行においても四十九日が明けた後であれば行っても問題ないとする考え方があります。

また、予約をキャンセルする際の費用の問題や、やむを得ない事情がある場合は仕方ないこともあるでしょう。ただし、旅行中も服喪中であることを忘れず、静かでおだやかな旅行にするべきです。

喪に服することは昔ほど厳格ではなくなっている

現代では価値観やライフスタイルが大きく変化しており、「死=穢れ」という考えが薄まっているため、故人が亡くなった後、四十九日が過ぎればお祝い事をしてもよいという考えが主流になっています。

昔と比べると、喪に服する期間に関するマナーは厳格ではなくなっていますが、故人を大切に想う期間であることを忘れず、ある程度の秩序を持って過ごすべきでしょう。