葬儀の基礎知識

御香料と御香典の違いについて

お店には「御香料」や「御香典」と書かれた不祝儀袋が並んでいますが、葬儀に参列する際にはどれを選べばよいのか悩む方もいるかと思います。また、いざというときに正しくお渡しするためにも、基本的なマナーは知っておくべきでしょう。

今回の記事では、御香料と御香典の違いや相場、正しい書き方や渡し方のマナーについて解説します。

御香料と御香典の違いについて

御香料と御香典は似たような言葉ですが、両者には明らかな違いがあります。まずは両者の違いについて解説します。

御香料とは?

御香料とは、四十九日、一周忌、三回忌などの回忌法要の際にお供えする金品のことを指します。

仏教では人が亡くなると霊魂になるといわれており、霊魂があの世へ行くと初七日目に生きていた頃の行いを裁く審判を受け、その後も七日ごとに審判を受けます。そうして四十九日目の最後の審判によって極楽浄土へ行けるかどうかが決まるのです。

かつては法要の際に、自宅からお香を持参して故人に供えていたことから、御「香」料という名前になったといわれていますが、現在はお香そのものではなく、金品をお渡しすることが一般的となりました。

ただし、仏教以外の法要では「御香料」ではなく、「御神前」や「御花料」となるため注意が必要です。

御香典とは?

御香典も故人へ線香や花の代わりに金品を供えるものですが、御香料とは異なり、御香典は通夜や葬儀の際にお渡しするものとなります。

昔はお供えするのはお米や野菜などの食料で、お金ではありませんでした。遺族は、親族や近隣の方々から持ち寄られた食料で、自分たちと参列者の食事をまかなったといわれています。その後、明治時代から昭和初期にかけて、御香典をお金で渡す現代のスタイルが広まっていきました。

金額相場の目安について

相手との関係性によって、どのくらいの金額を包むべきなのか悩む方もいるでしょう。ここでは御香料、御香典の金額相場についてご紹介します。

御香料の金額相場の目安

御香料で包む金額は故人との関係や年齢に応じて変わり、基本的には血縁関係が近い人ほど多く金額を包みます。それに加えて、年齢や法要後の会食への出欠も御香料の金額に加味しましょう。

一般的な金額相場は以下の通りです。

◆両親(義父母):1万円~5万円 ※20代の場合は3万円、30代以降は5万円

◆兄弟姉妹:1万円~5万円 ※20代の場合は3万円、30代以降は5万円

◆祖父母(義祖父母):1万円~3万円 ※20代の場合は1万円、30代以降は1万円~3万円

◆おじ・おば:5千円~3万円 ※20代の場合は1万円、30代以降は1万円~3万円

◆友人・知人:3千円~1万円 ※20代の場合は5千円、30代以降は1万円

ただし、住んでいる地域によって相場が変わるため、不安な場合は親戚や身近な方に相談してみると安心です。

御香典の金額相場の目安

御香典も御香料と同じく故人との関係や年齢に応じて変わりますが、金額相場は御香料よりも少し高めになっています。一般的な金額相場は以下の通りです。

◆両親(義父母):3万円~10万円
※20代の場合は3万円~10万円、30代以降は5万円~10万円

◆兄弟姉妹:3万円~5万円
※20代の場合は3万円~5万円、30代以降は5万円

◆祖父母(義祖父母):1万円~3万円
※20代の場合は1万円、30代は1万円~3万円、40代以降は3万円~5万円

◆おじ・おば:1万円~3万円
※20代の場合は1万円、30代は1万円~3万円、40代は3万円

◆友人・知人:5千円~1万円
※20代の場合は5千円、30代以降は5千円~1万円

◆先生・近所の方:3千円~1万円
※20代の場合は3千円~5千円、30代以降は3千円~1万円

入れるお札は新札ではないものを使う

御香料や御香典として用いるお札には、新札を使わないようにしましょう。新札を使うということは、「不幸が起きると思って事前に準備をしていた」という印象を与えるといわれています。

逆に、古札を使うことで「突然の訃報だったため急いで準備した」と受け取られるため、あえてシワの入った古札を使います。もしも手元に新札しかない場合は、自分で折り目をつけてから使いましょう。

正しい書き方について

不祝儀袋には決まったルールが存在しますが、「何となく知っているけれども詳しくは知らない」という方もいるのではないでしょうか。ここでは不祝儀袋の正しい書き方とマナーについてご紹介します。

袋の表書き

袋の表書きには上部中央に「御香料」または「御香典」と記します。

四十九日前の葬儀や法要の場合は、「死の悲しみで涙し、その涙で墨が薄くなった様子」を相手に伝えるため、表書きを薄墨の筆で書くのが一般的ですが、四十九日以降は薄墨ではなく通常の濃墨で書きます。また、基本的には筆ペンや毛筆で書きますが、もしなければサインペンでもよいでしょう。

名前は袋の中央に、上部の表書きよりも少し小さく書きます。連名で渡す場合には目上の方の名前を右側から順に記入し、3名以上になる場合は代表者名の隣に「他一同」と書く方法が一般的です。

中袋の記入方法

中袋には包んだ金額を「金壱萬圓也」「金参仟圓也」のように漢字で記載します。金額の前には「金」、末尾には「圓也」と記載するのが正しいマナーです。

金額の数字には、壱(1)、弐(2)、参(3)、伍(5)拾(10)といった漢数字を使い、千は「阡・仟」、円は「圓・円」のどちらかを用います。また、遺族が受け取った金額を整理する際に役立つように、中袋の裏面には郵便番号・住所・氏名も記入しておきましょう。

渡すときのマナーについて

いざという時に渡し方がわからず慌てた経験はありませんか?ここでは、御香料や御香典の渡し方やマナーについて解説します。

持ち運ぶ際は袱紗に入れるのがマナー

御香料や御香典を持ち運ぶ際に、袋のままの状態でカバンなどに入れるのはマナー違反になるため、必ず袱紗(ふくさ)に包んだ状態で持ち運びましょう。なお、弔事用の袱紗は、紫色や紺色、グレーなどの落ち着いたカラーで無地のものを選ぶのがおすすめです。

なお、袱紗からの出し方は、右手に袋を包んだ袱紗を乗せ、左手で袱紗を開いて中の袋を取り出してお渡しします。万が一、どうしても袱紗が手元になく準備が間に合わなかった場合は、袋をハンカチに包む形でも問題ありません。

渡す際には「向き」に注意する

袋を渡すときは、のし書きの文字の向きを相手から見て読めるようにして、必ず両手で渡しましょう。そのときに袱紗は受付の台の上に置いておきます。挟むタイプの金封袱紗を使用する場合は、袱紗の上に袋を置いて相手の向きに回して渡します。ただし、仏前に供える形でお渡しする場合は、自分が文字を読める向きで供えましょう。

また、御香料や御香典をお渡しする際は、「本日はお招きいただきありがとうございます。どうぞお供えください」と一言添えてお渡しするのが望ましい作法です。ただし、ご遺族もお忙しい状況のはずなので、受付では長々と話し込まないように注意しましょう。

御香料を辞退された場合

ご家族のみで法要を行う場合やお返しができない状態の場合は、御香料や御香典を辞退されるご遺族も少なくありません。

ご遺族が辞退された場合は用意する必要はありませんが、何も持たずに参列することに抵抗がある方もいるでしょう。そのような場合は、代わりに供物や供花を持参します。もしも、供物や供花も辞退されているのであれば無理に準備する必要はありません。