葬儀の基礎知識

苫小牧における、故人と一緒に火葬できる物の注意点とは

「故人と一緒に火葬」する物とは何でしょう? 

 日本の法律では、亡くなった方は所定の手続きを経たのちに火葬もしくは埋葬(土葬)されます。多くの自治体では衛生面の理由から「火葬を行ってからでないと埋葬はできない」と条例や墓地の管理規則などで定めています。火葬の際には、多くの自治体と同様に苫小牧においても、亡くなった方を棺にお納めしないと火葬場が受け付けてくれません。故人のお体を棺にお納めすることを納棺といいます。どのような宗派でも、無宗教であっても、必ず納棺を行うのです。

 棺は、一般的には葬儀社が用意します。極端なことを申せば、通販などで個人的に棺を買って納棺して、死亡届を出して火葬場の予約をして、棺を火葬場まで運ぶことが出来れば個人での火葬は可能です。ただ、労力も時間も非常に掛かりますし、死亡届の記入や提出のしかたには葬儀社に特化した専門性があって一般の方には難しいものがあります。葬儀から出棺、火葬に至るまでの段取りは葬儀社に任せたほうがスムーズに進行するものです。亡き方のお迎えに始まり、死亡届の記入から葬儀を経て火葬に至るまでの段取りをしっかりと行うめもりあるグループに、安心してお任せください。

 タイトルに掲げた「故人と一緒に火葬」する物とは何でしょうか。一言で申せば「副葬品」です。故人が大切にしていた品や愛用品など、家族の思う“故人に持たせたい物”を柩の中に入れます。では、副葬品は何を入れても構わないのでしょうか?

何でも入れてよいわけではありません。自治体の判断のもと柩に入れることのできないものがあります。こちらの記事では、苫小牧において定められている故人と一緒に火葬「できる物」と「できない物」を挙げ、理由を確認してまいります。

苫小牧において「故人と一緒に火葬できない物」はどのように指定されているでしょうか?

 苫小牧の火葬場においては「火葬は納棺された柩のみ受け入れ」を行っております。柩の中がどのようになっていてもよいわけではありません。苫小牧市から遺族の方々へ向けて出されている「副葬品の自粛にご協力ください」という案内書の記載は下記のとおりです。

「副葬品を『棺(ひつぎ)』に入れますと炉内設備の損耗はもちろん、焼骨が損傷する恐れや大気汚染物質が発生する可能性があります。

 人体に影響のあるダイオキシン類の発生や火葬時の障害を防ぐためにも副葬品を極力『棺(ひつぎ)』に入れないようご協力をお願いいたします。

 コイン等を入れる場合、炉内が高温になり溶解してしまう恐れがありますので、必ず指定された容器(ステンレス製のケース)の中に入れていただきますようお願いいたします。なお、容器については葬祭業者へお問い合わせください。」(下線部含め、引用ここまで)

 案内書を読むと、苫小牧市の火葬場では副葬品そのものを推奨していないことがわかります。「コイン等」とあるのは、主に仏教の教えからイメージされる「三途の川の渡し賃」であったり、「あの世でお金に困らないように」といった願いを込めたおまじないであったりするもので、溶解しづらい十円玉を用いることが多いようです。苫小牧市からの指定により、めもりあるグループではパンケーキ大の容器を用意いたしておりますので、その中へコイン等の収納が可能。火葬後は火葬場の厚意により半紙に包んでいただいてご家族の手に渡ります。

 苫小牧市からご家族への案内書は、死亡届の提出時に市役所から渡される一連の書類の中に含まれています。めもりあるグループでは書類を預かった後、ご家族様にお渡しして内容を説明いたしておりますのでどうぞご安心ください。  

苫小牧における「副葬品の制限項目」とは?

 苫小牧市からの案内書には「副葬品の制限項目」と「考えられる障害」が記されています。案内書の記述を元にご案内いたします。

第1の制限項目としては、「プラスチックや化学繊維製品(例としてゴルフクラブやテニスラケット、おもちゃ、人形、化繊の洋服、釣竿など)」です。ここで考えられる障害は以下の通り。「焼骨の損傷」、「ダイオキシン類の発生」、「急激な燃焼による温度上昇」に「酸素不足による不完全燃焼」、「火葬時間の延長」、「集塵装置の不具合」です。 

 例に挙げられているゴルフクラブやテニスラケット、釣竿には「カーボン製」とうたわれているものがあります。カーボンならば炭素なので大丈夫なのではないかと思われそうです。その正体はカーボン繊維を使用したFRP(繊維強化プラスチック)。カーボン繊維やガラス繊維、エポキシ樹脂やフェノール樹脂を使っているプラスチック製品です。プラスチックとは合成樹脂のことです。

人形やおもちゃには塩化ビニールやセルロイドなどの合成樹脂がよく使われています。セルロイドは世界初の高分子プラスチック。1870年代のアメリカで、当初はビリヤードの球に使われていた象牙の代用品として、ニトロセルロースを原料に開発。90℃で柔らかくなり加工が容易なため、広く使われました。日本でも大正時代から昭和初期にかけてセルロイド製のおもちゃが多く製造されたのです。極めて燃えやすく耐久性にも欠けるという特徴があったため、昭和30年代以降には他の材料に取って代わられるようになったという歴史があります。懐かしいセルロイド人形を副葬品として一緒に柩に収めたいとご家族が思われても、環境に対する配慮のため、苫小牧においては副葬品にできません。

 化繊とは何でしょうか。化学繊維の略で、対義語は天然繊維です。合成樹脂から作られた繊維のこと。合成樹脂を成分に含むものを燃やすと猛毒のダイオキシンが発生しますから、化繊で作られた衣服を副葬品にはできません。ペットボトルから再生してつくられることの多いフリース(ポリエステル系の合成繊維)衣料も、苫小牧では柩に収められません。

第2の制限項目としては、「ガラス製品や貴金属製品(例としてビン類、宝石、金、プラチナなど)」です。ここで考えられる障害は以下の通り。「焼骨、台車への焼付き」、「炉内での爆発(密閉の場合)」です。

 火葬時の炉内温度は、炉の種類によっても異なりますが800℃から1200℃の間で調整されます。かなりの高温になっています。ガラスの融点は1000℃前後なので砕けてぼろぼろになるか、砕けた後に溶融。貴金属製品はその金属の融点を超える温度にさらされると融けます。お骨に付着したり炉に付いて設備を傷めたりする可能性は否めません。密閉された構造の中に金属がある場合は、溶融後の体積変動により爆発を生じさせる可能性があります。苫小牧での火葬においてガラス製品や貴金属製品は、副葬品として柩の中に収めるべきではありません。

 ただし、歯科治療によって装着された金歯や銀歯を外すべきなのかといえば、その必要はないと考えます。結婚指輪など生前から大切に装着されてきた指輪を外すべきなのかといえば、絶対に必要なことではありません。柩の容積に対して極めて微量なものであれば、そのままで大丈夫です。

 第3の制限項目としては、「燃えにくいもの(例として厚い書籍、衣類、寝具、果物、ドライアイスなど)」です。ここで考えられる障害は「火葬時間の延長」、「酸素不足による不完全燃焼」。

 柩に燃えにくいものを入れると、火葬の障害となります。案内書にあるとおり、火葬時間がむやみに増えたり、柩内に酸素がゆきわたらないことによる局所的な不完全燃焼が生じたりして、火葬の遂行に支障が出ます。百科事典や辞書など厚い書籍はお入れしません。文庫本や雑誌程度にとどめます。冊数は極力抑え、ページを数カ所折り曲げて空気の通り道を作ってから収めます。折り方はめもりあるグループのスタッフが熟知しておりますので、どうぞご相談ください。

衣類を収める場合は一着程度に抑えます。納棺時、棺に付属する掛布団を亡き方のお体の上に掛け、その上に生前好まれた服をお乗せすることがしばしばあります。ご安置時に使っていた寝具を柩に収めることは通常行いません。家で不要になった寝具は引き取ることができますので担当スタッフにご相談ください、

 果物など水分の多いものは避けます。亡き方のお体を冷やして安定させるためにお当てするドライアイスは、出棺までに外します。

 第4の制限項目としては、「危険物(例としてスプレー缶、ガスライター、電池など)」です。ここで考えられる障害は「炉内での爆発」です。

 電池はサイズの大小にかかわらず火葬時の炉内温度にさらされると爆発します。電地で動くものを収めようとする場合には外します。心臓病の治療でペースメーカーを生前に使用されていて、亡くなられた後も体内に入っている場合は火葬場に伝えますので、斎場スタッフとの打合せ時にお知らせください。火葬場で適切な対応がなされます。

 スプレー缶やガスライターなど揮発性のある可燃物は炉内で爆発的な化学反応を示し、極めて危険です。ライターに替えてマッチをお入れするなど代替案をご相談することもできますので、斎場スタッフにご相談ください。

 副葬品にできるのかどうか迷った場合は、斎場のスタッフに相談なさることをお勧めいたします。私どもめもりあるグループにおいては、行政で決められたことを基礎として、ご家族様の想いも大切にして葬儀のお手伝いを進めてまいります。

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