葬儀の基礎知識

数珠の使い方について(数珠の種類について)持ち方について

私たちにとって身近な仏具の1つである「数珠(じゅず、ずず)」。葬儀や法要の参列時には、数珠の持ち方や使い方のマナーを理解したうえで堂々と振る舞えたらよいですよね。数珠の持ち方には仏教的な意味合いが含まれており、細かな数珠の持ち方は仏教宗派により異なります。

今回の記事では、数珠の種類や持ち方についてお伝えします。

数珠の種類は大きく分けて2つ

数珠には大きく分けて「本式数珠」と「略式数珠」の2種類があります。ここでは、それぞれの違いについて解説します。

本式数珠(二重)

本式数珠は、それぞれの宗派ごとに決められた正式な数珠のことで「正式数珠」とも呼ばれています。また、一般的に本式数珠は二重にして使用するため、「本連数珠」、「二連数珠」、「二輪数珠」と呼ばれることもあります。

宗派によって形に違いはありますが、数珠の正式な形として108個の珠がそろっているものが本式数珠です。われわれ人間が持っている煩悩の数は108個あると言われており、本式数珠はその108個の煩悩を108個の珠で覆ってしまう働きをもつと考えられています。

ただし、宗派によって数珠への捉え方には違いがあり、必ずしも108個の数珠ではないため注意が必要です。

略式数珠(一重)

略式数珠は、数珠の数を簡略化した数珠のことです。一般的な略式数珠は一重で作られており、「片手数珠」、「略式数珠」とも呼ばれています。

略式数珠は、以前までは108個を基準として、54個(2分の1)、36個(3分の1)、27個(4分の1)で作られていましたが、現在では使いやすさや見た目などの実用性が重視されています。

また、略式数珠は「男性用」「女性用」と区別されているため、購入の際には気をつけなければなりません。

男性用と女性用の数珠の違い

男性用と女性用の数珠の違いは、珠の大きさや全体の長さ、房や珠の色です。男性が女性用を、女性が男性用をといった混同した使い方はできません。

数珠の房や珠の色は、男性用は寒色系が多く、女性用は明るい色が多くなっており、どのような色を選んでも問題ありませんが、地域によっては慣習的に房や珠の色、形を決めている場合があるため、心配な方は確認するとよいでしょう。

各宗派の数珠の種類や持ち方

ここからは、宗派ごとに定められている数珠の種類や持ち方について解説します。

「真言宗」の数珠の種類や持ち方

真言宗(しんごんしゅう)は、弘法大師(空海)によって9世紀初頭、平安時代に開かれた大乗仏教の宗派です。他宗派と比べて、特に数珠の役割を重要視している宗派だと言われています。

真言宗の数珠

真言宗の数珠は、主玉(おもだま)108個、親玉2個、四菩薩(しぼさつ)4個からなる二重のつくりとなっていて、房は菊房で表裏2本ずつあります。この形はお経を7回、21回、54回、108回と唱える修法に基づいているといわれています。

大きさは男性用・女性用で異なりますが、ともに同じ形です。長い一連の数珠を二重にする持ち方のため、「振分数珠」とも呼ばれています。

真言宗の数珠の持ち方

合掌の際には両手の中指に数珠をかけ、両手で数珠を挟んで房を左右それぞれの手の甲側に出し、手を合わせます。自分のための修行や祈祷の場合は、房を手のひらの内側に入れて挟みます。

「浄土宗」の数珠の種類や持ち方

浄土宗は「浄土専念宗」とも呼ばれる鎌倉仏教のひとつで、ご本尊は阿弥陀如来です。浄土宗では念仏を唱える行為を信心の表れとして重視しており、「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えることで、平等に極楽浄土に生まれ変わることができるという専修念仏の教えを説いています。

浄土宗の数珠

浄土宗の数珠は、本式数珠でも珠の数は108個ではありません。浄土宗の本式数珠は、2つの輪がつながった2連の形で、1つの輪は球が27個、もう1つの輪は20あるいは40珠となっています。そこに金属製の2連の輪に房がつけられているのが特徴です。

浄土宗の数珠が2輪つながっている理由は、念仏の数をたくさん数えるためだと言われています。珠の数自体は他宗派の定番である108個よりも少ないですが、2つの数珠を組み合わせて数を数えるため、結果的に数は多くなります。

数珠には「日課数珠」「百八数珠」「荘厳数珠」の3種類があり、一般的な檀家や信徒は「日課数珠」を使用します。また、男性用、女性用で珠の数と大きさが異なり、男性用は「三万浄土」、女性用は「六万浄土」とも呼ばれています。

浄土宗の数珠の持ち方

合掌の際には以下の2通りの持ち方があります。

①二重にした本式数珠を合掌した両方の親指にかけ、輪と房は手前側に下ろします。

②合掌した状態で輪を人差し指と小指にかけ、輪は小指側に流し、房はそのまま真下に下ろします。

「浄土真宗」の数珠の種類や持ち方

浄土真宗は親鸞(しんらん)を宗祖とした宗派で、本願寺派(西)と大谷派(東)が存在します。他力本願の教えを説く宗教で、阿弥陀如来のご加護の力を信じて念仏を唱えることで、往生後すぐに成仏できるという考えがあります。

浄土真宗の数珠

浄土真宗は、「煩悩具足(煩悩はもともと備え持っているもの)のままで救われる」という教えのため、煩悩を消す必要はありません。そのため、片方の房は蓮如結び(れんにょむすび)で結ばれていて、数取りができないような形になっています。

数珠は、主玉108個、親玉2個、四天玉4個の構成になっており、片方の房には20個の弟子玉がついているのが特徴です。

浄土真宗の数珠の持ち方

合掌の際の使い方は、本願寺派と大谷派で異なります。

・本願寺派:数珠を2連に巻いて両手の親指と人差し指で挟み、房はそのまま下に下ろします。

・大谷派:両方の親玉が上にくるように2重に巻き、その親玉を両手の親指と人差し指の間で挟みます。房は左側に垂らします。

「日蓮宗」の数珠の種類や持ち方

日蓮宗は日蓮聖人(にちれんしょうにん)を宗祖としており、宗祖の名前がそのまま名称になっています。経典である法華経の中では、「南無妙法蓮華経を唱えることで万民が成仏できる」と説いています。

日蓮宗の数珠

日蓮宗の数珠は大きく分けると「勤行数珠」と「装束数珠」の2種類になり、一般の方が使う場合や僧侶が普段使う場合は「勤行数珠」を使います。法要などの儀式で僧侶が使う場合は「装束数珠」を使用します。

日蓮宗の数珠は、2個の親玉に計5本の房がついており、片方には2本の菊房、もう片方には3本の菊房がついています。数珠の珠の数は108個で構成され、108個繋げた数珠を持つことで煩悩を消して身を清めるご利益があると言われています。

日蓮宗の数珠の持ち方

合掌の際は、8の字にねじった数珠の2本の房が出ている方を右手の中指にかけ、3本の房が出ている方を左手の中指にかけてから手を合わせます。その際、2本の房は右手の甲側に下ろし、3本の房は左手の甲側に下ろします。

「曹洞宗」の数珠の種類や持ち方

曹洞宗は日本仏教における禅宗の一つで、お釈迦様をご本尊とする宗派です。「坐禅をし、自己と向き合うことで悟りの境地へと至る」とする教えを説いています。

曹洞宗の数珠

曹洞宗の数珠は主珠が108個で構成されていて、金属の輪が通っています。珠の一つひとつには煩悩を引き受けてくれる仏様が108尊おられ、この数珠を持つことで煩悩を消し去って身を清めるご利益があるとされています。そのため、曹洞宗では本式数珠を持つことが檀家・信徒の心得とされています。

曹洞宗の数珠の持ち方

合掌の際は、親玉が左手の人差し指の上にくるように輪を2重にしてかけ、左手の親指と人差し指の間に挟んで両手を合わせます。房はそのまま下に垂らします。

「臨済宗」の数珠の種類や持ち方

臨済宗も曹洞宗と同じく日本仏教における禅宗の一つで、「臨済義玄」を宗祖としています。臨済宗では「法嗣(師匠から弟子への悟りの伝達)」を重んじています。

臨済宗の数珠

臨済宗の数珠は曹洞宗とほとんど同じですが、輪はありません。男性用の数珠には紐房、女性用の数珠には頭付房が付いているのが特徴です。

臨済宗の数珠の持ち方

合掌の際は曹洞宗と同じく、輪を2重にして左手の親指と人差し指の間にかけて、右手を合わせて合掌します。房はそのまま下に垂らします。

「天台宗」の数珠の種類や持ち方

天台宗は、比叡山の開祖・最澄が開いたことで知られる宗派で、人や動物、草木などすべての生物が成仏できる「一切皆成(いっさいかいじょう)」という教えを説いています。

天台宗の数珠

天台宗の数珠は、主珠が平珠108個で構成されており、房には20個の平珠と10個の丸珠がついています。男性は「9寸サイズ」、女性は「8寸サイズ」、僧侶は「大平天台」を持ちます。

天台宗の数珠の持ち方

天台宗では、親玉を上にした状態で輪を2重にし、左手の親指と人差し指の間に数珠をかけます。その際、房は親指の内側を通し、合掌の際には右手で挟み込みます。